「遠野物語」をご存知だろうか?

遠野物語とは、柳田國男が明治43年(1910年)に発表した岩手県遠野地方に伝わる逸話、伝承などを記した説話集である。

その遠野物語の地を2012年に訪れた。実際の訪問紀とともに遠野の魅力に触れて行こう。

「遠野物語」の地、遠野とは

遠野市(とおのし)とは、岩手県の内陸寄りに位置する都市である。「遠野物語」のもととなった町であり、河童や座敷童子などが登場する遠野民話で知られる。

遠野市へのアクセスは、JR釜石線の遠野駅が最寄りであり、釜石線の起点である花巻駅から約1時間。釜石線は、起点の花巻駅で東北本線、新花巻駅で東北新幹線、終点の釜石駅で山田線と三陸鉄道南リアス線に接続している。また、一部列車は東北本線を経由して盛岡発着で運転されており、一部指定席の快速「はまゆり」も運行されている。

【画像】遠野駅と釜石線の路線図
【画像】遠野駅と釜石線の路線図

遠野物語の地を巡る

【岩手県遠野訪問:2012年8月】

釜石線の起点である花巻駅からスタート。釜石線のキハ100系車両に乗り込み、いざ遠野へ。東北新幹線との接続駅である新花巻駅から乗客がどっと増え、車内は一気に満員に。ボックス席でゆったりする気でいたので、混雑はちょっと予想外であった。

【画像】花巻駅で発車待ちの釜石線(釜石行き)
【画像】花巻駅で発車待ちの釜石線(釜石行き)

満員列車に揺られること約1時間、目的地である遠野駅に到着。遠野駅では自分を含めほとんどの乗客が降りたので、釜石線車内の乗客のほとんどがおそらく遠野観光が目的であろう。(外国人や旅行客っぽい人が多かったので)

【画像】遠野駅に到着した釜石線
【画像】遠野駅に到着した釜石線

遠野駅は、1914年(大正3年)に開業した歴史ある駅。「ヨーロッパの建築様式を取り入れ、石積みを思わせる重厚なおもむきのある駅舎」として、2002年(平成14年)、東北の駅百選に選定された。

【画像】遠野駅 外観
【画像】遠野駅 外観

遠野物語の地巡りはサイクリングで。駅前で自転車を借り、さっそく出発。

最初に訪れたのは、遠野駅の南側、自転車で5分程の場所にある遠野市立博物館。遠野の自然、暮らし、歴史、遠野物語の世界を学ぶ施設である。シアターでは、民話や「水木しげるの遠野物語」のアニメが人気。

【画像】遠野市立博物館
【画像】遠野市立博物館

遠野市立博物館を後にし、線路北側へ。この日は快晴でサイクリング日和。次の目的地である伝承園へ自転車を走らせる。

【画像】サイクリングコース走行
【画像】サイクリングコース走行

伝承園に到着。伝承園は、国の重要文化財の曲り家「旧菊池家住宅」や、遠野物語の話者の「佐々木喜善記念館」がある。千体のオシラサマが並ぶ「御蚕神堂」は圧巻。施設に入らず食事だけの利用も可能なお食事処では、様々な郷土の味を堪能出来る。今回はお食事処だけ利用。お昼に天ぷらそばを美味しく頂きました。

【画像】伝承園の天ぷらそば
【画像】伝承園の天ぷらそば

伝承園の次は、常堅寺(じょうけんじ)・カッパ淵。常堅寺は曹洞宗の寺院であり、「カッパ狛犬」の寺として知られる。カッパ淵に隣接しており、そこに住むカッパが常堅寺の火事を消して狛犬になったという伝説がある。

カッパ淵は、人々を驚かすカッパが住んでいるという淵。キュウリを餌にカッパが釣れるかもしれない!?

【画像】常堅寺とカッパ淵
【画像】常堅寺とカッパ淵

次の目的地へ再び自転車を走らせる。のどかな田舎の風景が続く。所々に道案内の標識があるので、観光者にとってはありがたい。

【画像】サイクリングコース走行2
【画像】サイクリングコース走行2

山口の水車に到着。水車は、農産物の脱穀や製粉に、地域共同で使われていた。山口集落には昔のままの小屋が残り、牧歌的な風景となっている。

【画像】山口の水車
【画像】山口の水車

デンデラ野。日本の重要文化的景観の山口集落にある、姥捨て野の伝説が残る地。遠野物語の話者・佐々木喜善の生家裏手の丘陵にある。

【画像】デンデラ野
【画像】デンデラ野

日が西へ傾き始めてきた頃、空を見上げると夏らしい入道雲が目に入り、自転車をこぐ脚を止める。空が大きい、とても広く感じられる。

【画像】入道雲
【画像】入道雲

田園風景を横目に自転車を走らせていると、並走するように赤とんぼ達が飛び交っていた。(残念ながら写真では分からないが・・・)

不思議な世界に入り込んだかのような、幻想的な光景であった。この遠野の地に来て良かった、そう強く思えた瞬間であった。

【画像】田園風景
【画像】田園風景

遠野駅を出てから約4時間、再び遠野駅へ戻ってきた。今回訪れた場所は、遠野市立博物館・伝承園・常堅寺・カッパ淵・山口の水車・デンデラ野。

4時間では遠野の地を巡りきれず、他の行けなかった場所は、また次の機会に持ち越し。遠野の魅力はまだまだ潜んでいるだろう。

【画像】再び遠野駅へ
【画像】再び遠野駅へ