JR東日本の期間限定フリーきっぷ『旅せよ平日!JR東日本たびキュン♥早割パス』(通称:キュン早割パス)を使って、信州から東北方面への旅を計画した。このきっぷは2025年2月・3月の平日に利用でき、JR東日本管内の新幹線や特急列車の自由席(指定席は回数制限あり)、ならびに普通列車が1日乗り放題となる。一部の第三セクター路線(三陸鉄道線、青い森鉄道線など)も対象に含まれている。
今回は、旅の2日目・3日目に【2日用】の「キュン早割パス」を利用。1日目は「JRE POINT特典チケット(4割引)」を活用して佐久平まで移動し、そこから2泊3日の旅が始まった。北陸新幹線で軽井沢を訪れたのち、東北・山形新幹線ルートで福島、山形、仙台方面へ。信州の雪景色と、東北に近づくにつれて移り変わる空気と風景を味わう、季節の変わり目にふさわしい旅となった。
【1日目】千葉県から信州・佐久平へ
旅の出発は千葉県内のJR駅から。1日目は日曜日だったため、『キュン早割パス』は利用できず、「JRE優待割引(4割引)」を使って佐久平駅までの乗車券と新幹線自由席を購入した。総武本線を経由し、佐倉駅で快速列車に乗り換えて東京駅へ。日曜の午後だったが、千葉から都心方面の列車はそれほど混雑していなかった。
東京駅からは北陸新幹線「あさま」に乗車し、一路長野方面へ。途中、高崎駅で一旦下車。ホーム上を少し散策したのち、次の「あさま」に乗り継ぎ、佐久平駅に向かう。




高崎を出ておよそ20分、トンネルを抜けた先の軽井沢周辺は一面の雪景色。さらに約10分、初日の目的地である佐久平駅に到着した。




駅周辺や道端には雪が残り、日が傾き始めた時間帯もあって、冷え込みをはっきりと感じた。宿は駅前のビジネスホテルを予約していたが、到着後はまず信州名物の蕎麦を味わうことに。駅前の「そばダイニング上仲屋」では、天ぷらと温かい蕎麦のセットを注文。旅の初日にふさわしい、体も気持ちも温まる夕食となった。




【2日目:信州の朝、軽井沢・大宮を経て東北への大移動】
信州の朝はよく晴れていた。空気は冷たかったが、雲ひとつない青空が広がっていて、気持ちの良い一日の始まりだった。佐久平駅から北陸新幹線「はくたか」に乗り、軽井沢駅で途中下車。わずか1駅の移動だが、沿線にはまだ雪が多く残っており、季節は春に向かいながらも、信州の冬の気配が感じられた。




軽井沢駅では、駅の南口から徒歩すぐの「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」内を開店前に軽く散策。3月の朝、しかも平日ということもあり、人通りはまばら。広大なアウトレットモールの空間が静まり返っており、白い残雪と無人のベンチが春の静けさを演出していた。冷たい山の空気が頬を刺すものの、空は晴れわたり、歩いていると自然と背筋が伸びるような心地よさがあった。




その後は、軽井沢駅構内を散策。しなの鉄道のホームに立ち寄るため、キュンパスの対象外である同社の入場券を購入し、改札内へ入場。かつて軽井沢駅は信越本線の途中駅であったが、1997年の北陸新幹線(当時の長野新幹線)開業に伴い、軽井沢〜篠ノ井間がしなの鉄道へ移管され、軽井沢〜横川間は廃止となった。現在、横川方面には車止めが設けられており、その先に線路はない。旧1番線側には、かつて碓氷峠で活躍したアプト式電気機関車EC40などが保存展示されており、旧駅舎の改札口も残されている。駅構内には今なお信越本線時代の名残が色濃く残っており、鉄道遺構としての趣深さを感じさせる空間となっている。




次に向かうのは東北地方。軽井沢から新幹線で一度大宮へ戻り、東北新幹線「やまびこ」に乗り換えて福島駅を目指す。信州から関東を経て東北へと抜けるルートで、地域ごとの風景の変化が車窓からも感じられる。
福島駅では、山形方面の新幹線に乗り換える予定だったが、ダイヤの乱れにより出発が大きく遅れ、約2時間ほど福島駅で足止めされることに。とはいえ、その時間も決して無駄ではなく、駅構内をのんびりと歩いて回るには十分すぎる時間だった。売店を覗いたり、列車の発着を眺めたりと、旅の途中の静かなブレイクタイムになった。




その後、山形新幹線「つばさ」に乗車。車両はミニ新幹線仕様で、福島から山形にかけては単線区間や急勾配もあるため、新幹線でありながら在来線の風情が残る。約1時間で山形駅に到着。こちらでは改札を出て駅ビルを少し見て回り、地元のお土産などを手に取る。短いながらも、その土地ならではの空気を感じられる時間となった。
山形からは仙山線で仙台へ向かう。この路線は奥羽山脈を越えるローカル線で、途中には山寺などの観光地もある。乗車したのは夕方。沿線にはまだ雪が多く残っており、冬の名残を感じる。日が傾くにつれて空の色が変わっていく様子を、車内からぼんやりと眺めながら2日目の目的地である仙台を目指した。




【3日目:宮城の歴史と再会、そして帰路へ】
最終日。仙台港近くから歩いて多賀城駅へ向かい、仙石線に乗車して仙台駅へ。さらに仙山線に乗り換え、仙台東照宮の最寄り駅である東照宮駅で下車した。




仙台東照宮は、徳川家康を祀る神社で、伊達政宗の遺志を継いだ二代藩主・伊達忠宗により1654年に創建された。荘厳な社殿は江戸時代初期の建築様式を今に伝え、国の重要文化財に指定されている。市街地にありながら、静けさを湛える空間である。




その後、仙台駅から東北新幹線「はやぶさ」に乗って東京へ。約1時間半の移動で、車窓の景色は次第に都会の風景へと変わっていく。
3日間の行程で巡ったのは、千葉から信州、東北と多様な地域。それぞれの土地に季節の移ろいが感じられ、移動そのものが旅の実感に つながった。大きく移動した分だけ、変化のある景色と空気に出会えた旅だった。